研究会・講演会

ホーム > 事業・活動 > 研究会・講演会

2008.7.10

情報通信月間共催 平成20年度JTEC第1回講演会報告


1 開催趣旨

最近の ICT分野における日本のプレゼンスの低下を懸念し、総務省は2007年から「ICT国際競争力強化懇談会」 を開催し、2007年4月に最終とりまとめを行いました。 この「とりまとめ」では、途上国を含む相手国との持続的発展のための「共生ー Win・Win」の関係が 提言されています。 そこで今回の講演会では、この「共生」を通して、日本の ICT産業が再び「日はまた昇る」ための シナリオを皆様とともに考えて見たいと思います。 コーディネーター、 講師の皆様はこの分野の第1人者です。 阿南様は情報通信事業者として、海外におけるネットワーク構築と利用展開に長年の経験を御持ちです。 藤原様はインターネットの草分け的存在であり、現在、総務省の競争力懇談会の構成委員でもあります。 古川様は民間サイドからユニークな方法で国際協力を実践されております。特に、バングラにおける ICTの展開 は途上国の持続的発展の国際モデルとして注目されています。 真野様は内国・外国において、携帯・インターネット・ WiMAX等を駆使してユーザーニーズに即した多彩・多様な ネットワークシステムを構築する豊富な御経験を御持ちです。  尚、今年10月に JICAとJBICが統合されて発足する新生JICAにおいては、「国際競争に勝つODA」と 「日本のプレゼンスが見える支援」を目標に掲げて居ります。 総額で年間 8500億円以上になるODA予算については、従来、箱物が中心でしたが、今後はICT分野を取り込んだ 効率的・知的なシステム構築分野にも配分をシフトするためにも、日本側が自信を持って相手国に提案できる 「モデル」が必要になっています。この講演会が皆様の御参考になることを期待しております。

2講演会内容

(1) 日程 平成 20年6月12日(木) 14時~17時
(2) 会場 五反田ユーポート 7階「末広の間」( 品川区西五反田8- 4-13)
(3) テーマ 持続的発展をもたらす ICTシステムの構築と普及

専務理事挨拶小嶋 弘 ( pdf )

問題提起   コーディネーター  NTTコミュニケーションズ株式会社
グローバル事業本部 ヴァイスプレジデント 阿南 修平 ( pdf )

 ⅰ講演1 インターネットの普及後の日本の ICT国際競争力

~世界 NO.1モバイル/ブロードバンド立国を目指して~

 講演者 インターネット総合研究所代表取締役所長 

東京大学大学院数理研究科客員教授藤原 洋 ( pdf )

 ⅱ講演2 バングラデッシュにおける実践

 講演者 株式会社 デフタ・キャピタル 取締役古川 拓 ( pdf 1)( pdf2 )

 ⅲ講演 3 ―無線とインターネット技術の融合と変化―

 無線 IP技術が先導するビジネスモデル

 講演者 ルート株式会社代表 真野 浩 ( pdf )

 まとめコーディネーター


3 総括

(1)雨にも拘わらず例年の参加人数を大幅に上回る80名余の参加者があったため、事前に用意した机だけでは足りず、急遽補助椅子を用意して対応した。

途上国の持続的成長をもたらす ICTの構築と普及には、光ファイバー、IPネット、固定電話網、携帯電話網、WiMAX等を、途上国のニーズに適合するように、適切に組み合わせて構築する事が現実的である。ただ、これらの構築に関して、適切・公正な比較評価が出来る人材や機関がまだ非常に限られているので、この人材の育成が重要である。ハード分野の日本のプレゼンスは劣後するが、運用・実績面では日本は優位な実績を有しているので、コンテンツやサービス面をアピールする支援・提案が重要である。


(2)また、1日、1人当たりの所得が1ドル以下の国でもビジネスとしての可能性はあると確信し、バングラデッシュにおいて ICTシステムの構築を実践されているデフタ・キャピタルの古川氏の話は今後の国際協力モデルのひな型として大変意義深いものであった。さらに、途上国が真に必要としていうのは自分達の自立のための支援、即ち、持続的発展のための支援であると認識し、これを事業として実践している人物が日本人であることは我々を大いに勇気付けるものでありました。バングラデッシュにおけるビジネスモデルに見られるように、途上国においてICTシステムを構築する場合、人口密集地域においても、またローカル地域においてもWiMAXと光ファイバーとを組み合わせた多様なシステムを組み合わせた手法が有効であるが、これらのシステムの評価、特に技術革新のスピードとコスト分析を考慮した評価は極めて難しい事が指摘された


(3)また、国際共生・協力を国際競争力の強化と一体として眺めた時、国境の概念を壊すような巨大なグローバル情報網の出現は、我々に対して従来のような途上国との在り方を根本的に見直すことを求めていると阿南氏から指摘があった。そのためには、①長期にわたる人材育成と技術移転、②長期にわたるシステム運用保守と24時間x365日の外国語による対応、③ ICT運用保守に必要な信頼できるローカル企業の育成、④ICT技術の多様化(網、端末、アプリ、ソフト)と統一展開の困難の克服が必要であるとの具体的且つ貴重な提案があった。


(4)会場からの質問とアンケートの中で指摘された課題は、我々、支援する側の人材の払底と技術・スキル・ノウハウの断絶であった。ポスト団塊世代として捉えればすべての分野の問題ともいえるが、特に ICT分野に若い世代が希望を持っていないことがとりわけ重大である。即ち、これは日本のICTの競争力が今後ますます、韓国、中国、インド等に対して劣後していくこと意味するものであり、日本の将来に関わる深刻な問題であるとの認識は出席者全員に共通するものありこれは危機感に近いものであった。我々自身の人材育成が急務である。


(5)「国際協力は我が国の持続的発展の生命線である」という認識の下、 JTECとしては今後ともこのような講演会の開催を継続して参りたいと思いますので、皆様方におかれましては講演のテーマや講師などにつき何なりと御意見など御寄せ頂ければ幸甚です。講師の方々、御運び頂いた皆様、御協力頂きました皆様に厚く御礼申し上げます。有難うございました