研究会・講演会

ホーム > 事業・活動 > 研究会・講演会

第1回通信・放送国際協力研究会の概要


1 開会・座長挨拶
 冒頭、座長の内海理事長からこの「研究会」の開催の趣旨について説明があった。
「今やグローバル化にともなう国際競争の中で、国際協力も支援の手段から生存と持続的成長を懸けた戦略的武器へとその役割が大きく変貌しているが、日本のプレゼンス・国際競争力の低下は一向に回復の兆しがみられない。 ICTの国際協力分野における中国、韓国の台頭とその影響力は開発途上国を席巻する勢いである。
 ITU事務総局長として8年間多くの開発途上国の首脳と対話をしてきたが、その殆どがICTによる国造り・人造りに非常に熱心であった。然るに日本では国内競争には熱心ではあるが、国際協力に対しては未だに非常に関心が薄いままである。 果たしてこのままでよいのだろうか。JTECが設立されて32年以上が経過する今日、改めて、ICTの国際協力について皆様とともに考える必要があるものと思い研究会を開催する事としたものである。」と話されました。
2 講演
総務省情報通信国際戦略局の上原国際協力課長から、「ICT産業の国際展開支援と国際協力~平成22年度の取組み~」という演題で御話を伺った。その概要は以下のとおりでした。
1) ICT産業と経済成長~国際展開支援と国際協力の意義~については:
①我が国のICT産業の国際展開ではグローバル市場の成長を取り込んだICT産業への転換が必要であること、
②そのための持続的成長基盤の構築に貢献する必要があること、さらには。
③貧困削減や水・食糧・医療・教育・治安・災害対策等のBHN(Basic Human Needs)充足への貢献が果たせることが重要であると話されました。
その例として我が国ではICT産業の経済成長への寄与は景気変動にかかわらず常にプラスであり、直近では3割の寄与をしていることを挙げられました。然るに我が国のODA総額に占める通信分野の比率は1%以下と非常に低水準で推移しているのが現実である。
2) 国際展開支援の取組例については:
上記の考え方を踏まえて、デジタル放送、ワイヤレス、次世代IPネットワークの重点3分野における途上国向けモデル事業(ユビキタス・アライアンス・プロジェクト)を平成21年度から開始している。中でも地デジ日本方式(ISDBーT)の海外普及の進  展は特筆すべきもので、既に南米10カ国とフィリピン採用を決めているので、今後は市場規模の拡大に伴う日本企業のプレゼンスが大いに期待される。
3) APT(アジア・太平洋電気通信共同体)については:
APTの事務局長は日本の山田 俊之氏であること、又、日本の特別拠出金(EBC)による施策が可能であるので大いに貢献して欲しいといわれました。EBCについてはJ1J2J3J4を円滑・有機的に組み合わせて継続・発展のシナリオを描いて進めて頂きたい。さらには、このEBCの成果を総務省のユビキタス・アライアンス・プロジェクトに発展させ、さらには国のODAプロジェクトへと発展させるモデルを形成・確立して欲しいと強調されました。( pdf1 , pdf2 )
3 質疑応答・意見交換模様
1)国際協力の分野における中国、韓国の勢いは顕著であるが、彼らの支援により構築されたシステムの信頼性や技術移転の評価はこれからの課題である。既に、アフリカにおける中国に対する不満の声がある。日本の技術と日本人に対する信頼はまだ残っているが、日本側だけでなく、相手側の人材も世代交代しつつあり、早急な対応が必要である。 2)日本がODA華やかだった頃の日本の設備が10年、20年を経た現在でも稼動している事実は認められている。
これらのシステムは設備の更改期にあるが、日本の企業は対応する余裕が無い。
3)日本側では案件の激減による影響により組織・人材の廃止・削減を実施したので、産業界における国際分野の人材は激減しており、その対応は出来ていない。
4)ODAをアンタイドが原則などといっている国は日本だけだと思って良い。他の国はまさに自国の生存を懸けた戦略の中に位置付けている。これが世界の常識である。実質的にタイドとなるようなスキームを直ちに工夫すべきである。
5)「国による「1社支援」が公平性にかける」から複数者応札制にすべし」という「もっともらしい議論」があるが、国家の生存に係わる重大な意思決定おいては、「オールジャパン」で決定すべきである。フランス、ロシア、韓国、中国、インド、ブラジルの首脳のトップセールスを見習うべきである。嘗ては日本でも、池田 勇人総理大臣は欧米から「トランジスター外交」と呼ばれるほどに輸出振興に全力を注いだものである。
6)従って、国のリーダーシップは非常に重要であるので、オールジャパンの仕掛けを国に作って頂きたい。
7)人材不足は深刻である。ベテランの退職・高齢化と継承システムの不在が現実であり、これに対しては最早1企業では対応が難しくなっている。老・壮・青が集える「場」が必要である。
8)一方で、嘗て日本に招聘され、日本で研修などを受けた日本シンパの研修等の卒業生との連絡網を確認・整備・アップデートして、常時情報を取得できるヒューマンネットワークが必要である。
4 閉会
 第1回の研究会は周知期間が2週間と非常に短かったにも拘わらず、全体で40人弱の出席者がありました。そして、
会場は大変真剣な雰囲気であり、予定時間を1時間近くも超過するという熱気のあるものでした。これも、中国、韓国の後塵を拝すことになってしまった日本のICTの現下に状況に対する「共通の不満・不安・期待」があるのだと強く感じた次第です。
この不安と期待に対してどう対応すべきか、次回以降も「研究会」を重ねて参りたいと思いますので、皆様の積極的なご意見をお寄せ下さい。講師の上原課長と総務省の皆様、出席された皆様には猛暑の中本当にありがとうございました。
5 御意見等
メールにてお寄せ下さい::jtec@jtec.or.jp