研究会・講演会

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第2回通信・放送国際展開研究会の概要


1.開会
座長の内海理事長が急用のため出席できないことになったため、進行は中川、小嶋の専務理事によって進められた。

2.講演
国際協力機構(JICA)経済基盤開発部運輸交通・情報通信グループ 運輸交通・情報通信第二課長 本村 洋氏から「ICT分野の国際協力の現状と展望」という演題で御話を伺った。その概要は以下のとおりでした。
1) 新JICAの組織体制

新JICAは2008年10月1日に誕生し、無償資金協力、技術協力、円借款を総合的・効率的に実施できる機関となり、現在世界最大の二国間援助機関である。組織体制は業務の司令塔としての「地域部」と「課題部」、「資金協力支援部」の3部体制である。   


2) JICAのICT分野の開発戦略目標

以下の開発戦略目標を掲げて開発途上国への協力を展開中である。
  ①国のIT政策における能力向上
  ②IT人材の育成
  ③通信基盤の整備
  ④各分野へのIT活用
  ⑤IT活用による支援活動の効率化(JICA-NET)
また、放送分野の開発戦略目標は以下のとおりである。
  ①放送政策策定支援
  ②放送施設・機材の整備
  ③放送組織・人材の育成
  ④各分野への放送活用


3) ICT分野の今後の方向性

従来のICt分野のODAはアジア偏重であったので今後は下記を重点に置き支援したい。
  ①アフリカ地域における展開
  ②地デジ展開関連支援
  ③利活用分野の拡充
  ④開発課題と三スキーム一体運用による相乗効果


4) 情報通信の役割
情報通信は教育、医療、介護、防災、通信、放送、航空、農業、運輸、、交通等広範囲な分野に活用され、それらを支えるツールとなり重要性が増大している。
そして、国際協力援助担当者への案件形成への期待として以下のことを強調した。

①ICTは今後様々な分野での利活用が大いに期待されるので、案件の発掘・形成に努力して欲しい。
②今後は技術協力・無償・有償の3スキームを最適活用することによる大きな協力インパクトの発現を目指すこと。
③収益性の高い事業については、有償、官民連携パートナーシップによる案件形成を目指すことができる。
④その他、BOPビジネス制度についても活用していきたい。


3.質疑応答・意見交換模様
1)ODA予算の激減の中で比率のわずかなICT分野への影響は著しくこれが案件の減少に拍車をかけている。この長期の悪循環の結果がICT分野の案件が当該国から要請されてこない現実を常態化させている。この要因としてはアンタイドの契約形態がリスクを伴うことから、産業界等から当該国との協力による案件形成へのインセンティブが働かないことが挙げられる。その他、この分野における中国や韓国の台頭の中で、最早、ICT単独では当該国の提案プロジェクトの中核とはなりえない現実がある。今後はサ-ビス・アプリケーションを盛り込んだ提案を行う必要がある。
2)依然ICTは諸分野の支えという認識があり、現地タスクフォースの重点分野にも盛り込まれない状況である。
3)ODA予算の減少、特にICT予算の激減への対策としては限られた資金の絞込みが必要である。最近は地デジの国際展開分野で南米を中心に招聘研修やアドバイザーの派遣を行っている事は目新しい傾向である。その他資源の集中化を図るスキームの工夫によって新たな案件の形成を検討すべきである。
4)STEP等タイドの仕組みをICT分野全般にも拡大していく工夫が必要がある。
5)APTの日本の特別拠出金によるパイロット実験の終了後は、何とかJICAのプロジェクトとして持続性が保たれるよな仕組みが必要である。折角構築されたICT研修センター等もその後の維持・管理を継続しないと効果は半減する。 
6)ICTの利活用の重要性は増大している。特に、「水」関連プロジェクトや農業等の分野は重要である。
7)携帯電話の機能を活用した途上国のためのサービスシステムの案件などは国際競争の中ではあるが、有望ではないか。
8)前回提起された、招聘研修生とのチャンネル形成については、関係機関とも、機会を特定すればケースバイケースで対応する姿勢はできていること。個人情報保護の観点も考慮して国際展開に貢献するよう工夫すべきという理解を共有することができた。

4.閉会
第2回目となる今回は、外務省、総務省、経済産業省の担当課の御理解をいただくことができました。また、総務省、経済産業省の皆様には質疑応答に加わって頂きありがとうございました。
なお、研究会の名称は前回は「通信・放送国際協力研究会(仮称)」としておりましたが、今回からは「通信・放送国際展開研究会」と致しました。国際協力は国際展開に含まれるということと研究会の方向をより解りやすくしたいという理由からです。
講師のJICA本村課長、また、参加の皆様には貴重な時間を御割き頂きありがとうございました。

5.御意見等
メールにてお寄せ下さい:jtec@jtec.or.jp
(後日、参加者から建設的な「感想」をお寄せいただきましたのでご本人の了解を得て掲載させていただきました。( pdf
ありがとうございました。)